●小泉山と大泉山

諏訪地方に伝わる様々な言い伝え
その代表的なのが“でいらぼっち”の話じゃないでしょうか
宮崎駿監督作品のもののけ姫では神的な存在として描かれ、この諏訪地方でも
昔からこの土地の創生に欠かせない伝記として伝えられています

とおい昔の話です。大山祗神(おおやまづみのかみ)という山を作る神様に二人の娘がいました。
一人の娘には富士山を作って住まわせました。そしてもう一人の娘には浅間山を作って住まわせようと、諏訪の土をたくさん運びました。
そのために諏訪の土地には、大きな大きな穴がポッコリ空いてしまったのです。
蓼科山は八ヶ岳の妹でした。
その蓼科山は、手ですうっと撫でたようになだらかで、やさしく美しい姿をしていたので諏訪富士とも呼ばれていました。
そんな蓼科山は兄さんの八ヶ岳が富士山に蹴飛ばされてから毎日毎日泣いていました。
「お兄ちゃんがかわいそう…富士山より低くなっちゃったよぉ。」あたりかまわず大声で泣きました。

2007.02.12撮影 小泉山
まわりのものが、いくらやさしく慰めてもなおいっそう大声で泣くだけでした。
大きな蓼科山が両方の目から、どくどくと涙を流し泣きじゃくっりました。
とうとう涙は音をたてて蓼科山のすそをはしり、一筋の川になりました。
そして諏訪の土地のへこんだ所へ流れこみ、蓼科山の涙がたまって諏訪湖ができました。
ちょうどそのころ「でいらぼっち」という大男がどこからか現れました。
この大男が座ればおしりの下は四キロ四方がすっぽり隠れてしまい、背丈は雲を突き抜けるほどでした。
また一歩の幅は、四キロほどもありました。

2007.02.12撮影 大泉山

でいらぼっちは諏訪の土地が湖になってしまったことにひどく怒りました。
「やいやい、えれえことになったぞ。あんな所へ湖ができたぞ‥。俺が一度に埋めてやるぞ。」
そして大きな手で、二・三度八ヶ岳を削りとり土の山を二つ作りました。
その土で諏訪湖を埋めようというのですから、たくさんの土でした。
でいらぼっちは、天びんぼうで二つの土の山を軽々かつぎあげ、八ヶ岳のふもとから諏訪湖をめざして急ぎました。まるで二つの山が空を歩いているようです。
そして、しばらく行った時でした。
天びんぼうが真ん中から折れてしまったのです。

諏訪SAからのぞむ諏訪湖
「ドサーッ!!」二つの土の山がこぼれ落ちました。
「やあやあ、いけねえことをした。」でいらぼっちは頭をかきながら神之原村へ行きましたが、新しい天秤棒あいにくありません。
しかたなく、粟沢村へいって新しい天秤棒を貰いました。
でいらぼつちは急いでもう一度かつぎあげようとしましたが、びくともしませんでした。
ふたつの土の山は、すっかり地にひっついてしまったのです。
でいらぼっちは諦めどこかへ行ってしまいました。
今、茅野市玉川、泉野、豊平の境に少し間をおいて、二つの山が並んでいます。
でいらぼっちが、八ヶ岳を削ってかついできた二つの土の山が、この山です。
現在、諏訪湖に近い方が小泉山、八ヶ岳に近い方が大泉山です。
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